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力を発揮できない、そういう現状もあるからです。
他で十分に発言や力を発揮できないために、女性は家庭で必要以上にエネルギーを発揮するのかもしれません。これは多少冗談めいたことかもしれませんが。
結婚すると皆仕事を離れて、専業主婦になってしまう。学校を卒業した時にその女性が仕事に就いてしまったために、有能な若い男性が仕事に就けなくなった、どうしてくれるのだ、というご質問がありました。それは確かに一理ありますが、問題はなぜ女性が仕事を途中で辞めなければならないのかというところに問題の根源があると思います。
子育て、子供の面倒を誰がみるのかという問題があると思います。本当に女性は仕事を辞めなければならないのか。子育てでサポートが得られれば、女性は辞めなくてすむかもしれません。頑張っている女性はいますし、女性の国会議員もいらっしゃいます。企業のトップの人もいらっしゃいます。そういった方は、男性よりももっと、苦労しているのです。いろいろありますが、社会的な圧力に対抗しているわけです。
女として、妻としての務めはどうしたという、逆風の中で頑張っているわけです。このように圧力のために、仕事をドロップアウトして、専業主婦に戻ってしまい、今お話になられたような状況が生まれるかもしれませんが、そのような逆風を取り除いてあげる社会的なメカニズムやサポートケアがあれば、そういうことはそもそも起こらないと思います。ということは考え方、姿勢の問題だろうと思います。
女性の技師も優秀です。非常に価値のある貢献ができるわけです。そういう人たちが末永く貢献できるような土壌を作ることが大事だろうと思います。
農業の話もお話しさせてください。行動綱領の重要な要素です。今お話になられた通り、女性は正規の教育、トレーニングをなかなか与えられていません。特に農業の面では教育がなかなかなされていないのです。そこで、こう申し上げたい。フィリピンでも途上国でも、伝統的に女性は畑に出て男性と働いていたわけです。ですから農夫がいれば、それを助けて鍬を入れる女性もいるわけですが、農民、農家というとすなわち男性のことを指し、そこにいる女性はその農民の奥さんとなってしまいます。しかし、2人とも農民で、2人とも農業生産者であるということは、夫も妻も変わりはありません。
女性も、現場に出て畑を耕しているわけですが、とかく農業生産者とその妻という位置づけになってしまい、農業技術改良普及のためのプログラムも全部、男性の農業生産者のみに向けられてしまっているのです。昔から農業生産に従事しているのは女性でありながら、本流からはずれてしまっているのです。
特に農業の近代化の過程で女性が傍流に置き忘れられてしまっているという問題があります。従いまして、おっしゃるように、もっと女性に目を向けた教育プログラムが必要です。それは北京でもうたわれていますし、また漁業の分野でも同じです。

 

 

 

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